35段目3番
鼻濁音
よしだたくろうの<ともだち>と<今日までそして明日から>が初めて買ったシングルレコードだ
両A面が歌い文句で聞くたんびに(あっち)が良くなったり(こっち)が良くなったりした
シャリシャリというまで聞き続けた
気になることがあった
拓郎は鼻濁音ができない
たとえば(わたしにはわたしの生き方がある)のがが濁音になる
当時俺は濁音をバカにしていた その基本姿勢は現在も変わらない
そういえば青山杉作記念俳優養成所7期生の友人、倉敷出身の大将もできなかった
よもぎたのぎが濁音になる 普段は「よもさん」と呼んでくれてはいたが
劇団仲間の生井健夫から出身地を問われた際、栃木より日光の方が通りがいいだろうと
「ニッコー!です」と答えたら
「お前は日本航空から生まれたのか?」
(てやんでえ!)みんなの失笑を買った
それを根に持ち半年でやめた
生井健夫が同じ日光の中宮祠の出身と知ったのは2ヶ月後、本人の口からだ
おまけに拓郎は滑舌が良くない
俺も輪をかけて悪いが、井上陽水やあの立川談志よりは増しだろう
時代は変わった 鼻濁音ができない輩が増えた 東も西もなくなった
時代が変わるのは仕方ない
変わってくれなくては困るのだが、濁音だけはネ
ついこないだ公務員と電話で話すハメになった
まず「よもぎた」と名乗った 「よもぎたさん?」 「いえ、よもぎたです」 「よもぎたさんですよね」 「いや、がぎぐげごのよもぎたです」 「よもにたさん?」 「だから、なにぬねのじゃなく、がぎぐげごのよもぎたです」 「よもみたさん?」
俺は受話器を叩きつけた
俺は頑固で頑なな老人だろうか?
酒は一滴も入っていなかったが
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