2022年6月29日水曜日

中島京子の5冊 その2 花桃実桃

34段目3番

無念


コロナの勢いが一時ほどではなくなったせいか、円安の勢いもろともせず、またぞろ人々の動き出す気配がある

俺の知っている日本人3人が、バタバタとチェンマイへと旅立っていった 

のを、とある情報から知った

俺には無理だ 金がない 

日本へ引き揚げる決心をした時、諦めはつけていた


チェンマイ時代は、毎朝走った 

その帰り道、日課のように豆乳นมเต้าหู้を買った

アパートを繰り返し変えたから、いろいろな場所で買った

「砂糖を入れないで」ไม่ใส่นำ้ตาลと言うのを忘れなかった

ある時、砂糖を入れない豆乳は「○×○×」と言うのだ、と教えられた

独特の言い方があるのだが、今は完璧に忘れてしまっている


最後はスアンドーク寺裏手の、ホテルも兼ねるマンションに住み、通りにやって来る屋台の豆乳を愛飲した

毎日、奥さんが引いてきた 

なぜ奥さんと分かったかっていうと、1週間に1度か2度は旦那だったからだ 

ふたりはきっと30代だ

その屋台をスアンドーク通りと平行に走る裏道3本目のテープサティット通りの隅っこに見つけた時は驚いた

いつも決まった場所にある 商売から帰ればそこに置くのだろう 

ふたりは近辺に住んでいる

俺は通ぶって「○×○×」と注文したものだった


チェンマイを引き払って3年以上過ぎた 

この清原団地に越してきてからも2年と4ヶ月が経った

「○×○×」の言い回しをやっぱり思い出せない

ネットで調べても、調べがつかない

重ね重ね無念でならない



 


0 件のコメント:

コメントを投稿