33段目5番
石嶋真弓
が、小学4年の時転校してきた
担任のスギウラ先生に言われ、ぼくとスズキマサキヨは彼女用の机と椅子を取りに行かされた
ぼくらが後期の学級委員で男だったからだろう
大谷川沿いの渡り廊下を進むと、音楽室に突き当たる
そこだけ独立した別棟だ
音楽室の上が倉庫のようになっている
石嶋真弓を初めて見た時、肌が浅黒く良く言えば小麦色で、タイプだなと感じた
いや、彼女を前にして初めて浅黒い人が(好み)と気づいた気もする
これで(鼻)が上を向いていなければ非の打ち所のない美人なのにと思ったものだ
お父さんは警察関係ではなかったか エライ人だと聞いた 署長だったかも知れない
石嶋家にあてがわれた一軒家は石屋町にあった
その石嶋家を、1学年上の6年生モトヤマと見張った
面と向かっては「モトヤマさん」と呼んでいたがモトヤマは絵にかいたような劣等生だった
たとえばケージちゃんは勉強ができないが劣等生のイメージはない
だが、モトヤマから醸し出される雰囲気は俗悪なのだ
確かな記憶ではないがケージちゃんに
「モトヤマのために、一肌脱いでくれ」と、頼まれたのではなかったか?
だってそれまでモトヤマとは、ともだちでも何でもなかった
モトヤマは石嶋真弓を好きになって、手紙を渡そうと、張ったのだ
結局その日石嶋真弓に出くわすことはなかった
モトヤマの純情が、どんなふうな結末を迎えたかハッキリとは知らない ただ成就はしなかった
その変な1日を除き、2人はまた疎遠になった
中学1年の夏休み、ぼくは野球部の練習に明け暮れていた
東中、少し手前の(鈴や)でソースをたっぷりかけたポテトフライを1本食って帰るのが、習わしだった
ポテトフライを頬張る目の向こうに、道路を挟んだ長椅子に石嶋真弓がかしこまっていた
彼女は卒業式から日を置かず、岡山か広島の方へ転校して行った
隣に座っているのはシミズキミエだ
夏休みを利用し旧交をあたためにきたのだろう
石嶋真弓の鼻は相変わらず、上を向いている
彼女の華やかさは、どうもその鼻から振り巻かれているようなのだ
石嶋真弓は気づいてくれただろうか?
シミズキミエは言ってくれただろうか?
「ほら、あそこにヨモギタ君がいる 覚えているよネ?」
と
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