23段目12番
こぼれる
どうせ死んで無になるのなら
生きた証などいらないのではないか
生きた痕跡など邪魔くさいだけだろう
生きた証がいらないなら生きる意味もいらない
生きるのが無意味なら苦しみも無意味だ
その刹那にそこにあることが
この刹那にここにいることが
生きるということ
っていうか、それしかないし、できない
俺たちは、ここにあることで
苦も楽も幸も不幸もない等しい宇宙を共有している
死ぬというのは
その宇宙から、こぼれて消えて
跡形もないのを、いうのだろう
こぼれる 2
最近はこぼれっぱなしだ
尿意を覚えてトイレに立つ
扉を開けると、ほっとするからなのか、ズボンのチャックも下ろしてないのに、小水が「ヒョッコ」とこぼれる
冬は1時間半、夏は2時間おきに、トイレに起きる
出は悪く、勢いも往時の3割以下だ
立ってやるなど、もってのほか
洋式の便器に「ドテット」とは座らず
若干、尻を浮かせ気味にし、用を足す
最後は念入りに、太腿の裏から右手を差し入れ
指先で付け根を押さえ込み
掻き毟るように、激しく揺さぶる
つられて腰が「ギクシャク」揺れる
下着をずり上げ2、3歩、歩くと
きっちり落とし前をつけたはずのモノが
ひょこっと、こぼれる
年とともに、すっかり丸くなり、怒ることは、極端に少なくなった
ただパソコンが思うに任せぬ時と、こぼれた時の話は別だ
マウスを投げつけ、あるいは穿いたばかりのパンツを脱ぎ捨て「この野郎!」と口に出していたりする
こぼれるのは1日数回だが、到底回復は望めず、悪化の一途だろう
おしめを締めて生きることになるんだろうか
どこかで見切った方が良くはないか
同じくらいの年齢で10代20代の女と暮らしてる男はいくらだっている
やつらは「こぼれない」のだろうか?
こぼれても達観しちゃってるのだろうか?
思いを馳せてみただけで、比べたのではない
比べても詮無いことだ
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