24段目10番
不眠への招待
キーン
というかすかな金属音はなんなんだろう?
耳鳴りだろうか
幻聴なら
実にコマメで甲斐甲斐しい
じゃないなら
キーンキーンはどこから来るのか?
音源を追求する執念は
残念だが持ち合わせていない
スイッチが入るようにして唸りだす
キーンという正体不明の音を
懐深く抱きしめ
寝床に佇むしかないようだ
春眠暁を覚えず
とは、よく言ったもんだ
人生ちっとも楽しくなんかはないけれど
面白いようによく眠れる
四六時中寝てるから眠りは浅く
実は曙にも黄昏にも気づいてはいる
こんな寝方ができるのも働いてないおかげ
仕事がないことに先ずは感謝
とにかく今は肌身の鬱屈打っちゃって
愚民、惰眠を貪ろう
随分前にオックスのアイ高野が
(イヤ、アイ高野はカーナビーツだったか)
死んじまったと、聞いたような気がする
他人の死は忘れても、感謝の念は忘れずに
そうして
眠りに眠れば
いつしか視界が切り落とされ
新しい自分が立ち上がるかもしれない
ちょっと目を離した隙に
雲の形はとんでもないことになっちまう
快晴にひとつぽっこり浮かんでる雲だとしてもだ
これまでの人生 雲を気にかけないでもなかった
初めて飛行機に乗り
上からあるいは横から眺めた雲は「なるほどな」といたく感心した
最近は部屋で飲んでいる
魚べいでは無銭飲食未遂事件を起こしてしまったし
ガストはしっかり出入り禁止だ
旧今市市はそれほど広くない 安い店は限られる
だいいち先立つモノがない
秋が深まり天気のいい日が続いている
起きれば酒が欲しくなる
座椅子に背を預け、ベランダに足を投げ出し
飲み始めれば、目に入るのは空だ
そこかしこに浮かび上がってる雲、雲、雲だ
ちょっと目を離した隙に
スエズ運河がパナマ運河に入れ替わったりしちゃうから
油断大敵ケガ一生だ
「おーい!雲よ」
と、山村暮鳥に倣って叫びだしたくもなる
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