24段目2番
真空地帯
風に吹かれて、紙切れが飛んでいった
ぼくを置いて、どこかへ行ってしまった
何にもなくて、がらんどうなのに
風は冷たく触れただけ
紙切れは、どこに行ったのだろう?
ぼくの知らない、遠くの街だ
未練もケレンも、ないはずなのに
風は冷たく触れただけ
四十年前に書いた詩が唐突に甦り
同時にあの紙きれは、ぼくだったのだと知らされた
十五のぼくは紙きれになってでも
遠くへ行ってしまいたかったのだろう
そして、いつからかは定かではないが
あこがれの街に、いるらしい
酒はうまいし、ネエちゃんはきれいで
義理もしらがみも、ついでに恥も外聞もない
だが、あの世ではないらしい
時折、真空地帯に吹き飛ばされた
紙きれにでも、なってしまったような
震えようのない寂寞を覚えるのだ
それは小さい頃、周期的に襲われた、死の感覚に似ていないこともない
「それに比べりゃ、屁みたいなものさ」と
ついさっきも、うそぶいたのだが
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