21段目6番
死
は厳かだ
ふてぶてしく屹立している
死はひとを選ばない 何も求めない
少なくとも俺は、死から生まれ、死とへと帰る
産声を上げた、その時から、従順に同じスピードで歩き出した
っていうか、絶対に故障を起こさないエスカレーターに、乗っかってしまったわけだ
それこそ暗黙の了解ってことで
寝ている時も、飲んでる時も、マスかいてる時も、同じ速さで正確無比に、死に向かっている
何人の女と嵌めようが、一時間半でハーフマラソンを走ろうが、いかなる時も一歩一歩、近づいている
寄り添うと楽になれる瞬間がある
添い寝すると「すべてが許される」ような気になることもある
泥酔しクダ巻いても、死は、屁とも思わないだろう
あいつを憎み、奴らを恨み、彼らを妬み、全部嫌っても、死は受け入れてくれる、のではないか
たとえ、ひとを殺したところで
双子でも六つ子でも、ひとはひとりで生まれ出てくる
だから、ひとりで死んでいく
それが死と、との約束、契約だろう
ひとを殺してしまったら、ひとはひとりで死んでいけない
誰かを殺しちまったら、死はその懐に収斂させては、くれまい
胎内と同じようには、抱きかかえて、くれないだろう
普段通りに
いかない時が、ある
普段通りが一番楽ちん、なのは
重々承知だ
祭りを懐かしく思う、ことがある
誘われれば応じる
気がつけば、祭りのあとだ
祭りのあとは、どうしようにも、どうしようもない
あとの祭りだ
若い頃は、心身ともに動揺した
死の恐怖に、さいなまれた
人生に場馴れした今は、それほどではないにしろ、吐く息が饐え、心臓が脈打ち、こぼれる
普段通りには、いかなくなる
何もすることができず、トイレとめし以外は、体、仰向け、心 放りだす、しかない
仕事持ちの身だったら、まちがいなく投げ捨てる
そうやって何百という仕事を失ってきた
朝も昼も夜も真夜中も、普段通りが、一番いい
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