21段目4番
フニクリ・フニクラ
この年になると友人知人が、好きな作家芸能人が、どんどんどしどし、死んでいく
好きでもないタレントや有名人、はたまた見知らぬひとまで含めると、一日にいったい何人の人間が死んでいっているのか
百万か一億か、算数の苦手なぼくに、百万と一億の区分けはつかない
順調にいけば、妥当な線なら、ぼくが殺されるか、居眠り運転のダンプカーに突っ込まれない限り、先に死にそうな、友人知人がいる
電動車椅子に乗り週三回透析を受けているWもその一人だ
Wが脳梗塞で倒れたのは七年前
音信不通が続いていて、知らなかった
教えてくれたのは糖尿病の悪化から、右か左の足の親指の先を
切り落としたCだ
Wが一学年下でCがひとつ上になる
半年前にWとの音信がひょんなことから復活し、つい最近のメールに、倒れた時の状況を記し、「これを、詩にしてもいいぞ」と言ってきた
だから、これを書いている
Wは二日酔いの重い頭で目覚めた
ゴロリと寝返りを打つとベッドの下に
雨の降る日の配達に新聞を入れるビニール袋が落ちている
その横にはハナガミ入れの空箱があった
Wは思いを巡らす
「燃えるゴミの日はいつだったけ?」
と
乾いた喉で「よし」とつぶやきビニール袋に手を伸ばそうと
した、その時
ガツーンと、あるいはプツンと、脳梗塞がWを襲った
このメールを送ってからだいぶ経つが、Wは何も言ってこない
何か気に障ることを書いてしまったのではないか?
十回は、読み返した
「まさか死んでしまったのではあるまいな」
と、五回は考えた
そのあいだを、行ったり来たりして、前へは進まない
「あと一ヶ月すりゃあ、日本に帰る」のだからと
ただただ、じっとしている
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