2021年6月12日土曜日

梁石日の5冊 その4 大いなる時を求めて

 18段目10番

ガス燈



その時その時で好きになった女優は、何人かいた
夢中とまではイカなかった
では、昔の映画も含め誰が一番キレイだったってことになれば
イングリット・バーグマンの澄ました顔が目に浮かぶ 
改めて見てみればガタイも立派で、まさにタイプだ 
小柄なぼくの2倍はあるだろう 1度埋もれてみたかった

映画の出来はさておき、バーグマンが一番キレイなのは、女優を撮らせたら右に出る者のいない
ジョージ・キューカー「ガス燈」だろう

ガストを<出入り禁止>になっていたのを、ついこの前知った
清原の市営住宅から旧日光地区の実家に帰る時は、ママチャリだ
道中、登り坂だから漕ぎ続けねばならない 
ただ一ヶ所、団地を出てすぐ、下りがある 
下りきった右手にあるのが<ガスト今市店>だ

第一土曜日、いつものように実家に行こうと自転車を漕ぎだした
小雨がパラつきだした 
念には念を入れ、引き返す

実家で飲もうと用意しておいた、220ml25度のワンカップ焼酎2本を飲み始める 
そしたら、晴れ間が見えだした
「何たることだ! 今更、帰る気は失せた こうしちゃおれない お昼になれば混みだすだろう」
と、ガストへ駆けつけた

備え付けのタブレットで、グラスワイン確か¥99と、とろろ芋確か¥77の注文を済ます
痩せて背が高い、白と黒の制服に身を包んだ女の従業員が近づいてきた 
この人の歩く姿は、けっこう好きだ

彼女は言った
「お客様は出入り禁止になってる、とのことですが」 
「どういうことよ どういったイキサツなのか、教えてもらえる?」
奥へ引っ込み、再びやって来た

「大声で他のお客様顧みず、歌を歌っていたそうです」
「暴力をふるったりもしたのでしょうか?」
また奥へ引っ込み、みたびやって来る

「そういったことは、一切なかったそうです」
そうなのだ 65年生きてきて誇れることが二つだけある
少年の頃
「秀雄は人の噂をめったにしないけど、それだけは偉かんべ」
と母から褒められたことと

他人様から殴られたり蹴っ飛ばされたことは数知れないが「一度も、殴ったことはない」 
そのことだ



中瓶

1日を食費を含めて500円以下で暮らしいるから、外食は滅多にしない
だが部屋で飲み上げ抑えが効かなくなってしまったら、話は別だ
どこへだってママチャリを走らせる

ビールが一番安いのはすき家の420円だ
はま寿司が450円で、無銭飲食未遂をやらかした魚べいもそれくらいだ
幸楽苑は瓶ビールがなくて、生の中ジョッキが500円
あおやぎラーメン一家横浜?も行ったのは1度だけ 
いくらだったかは忘れた 安くはなかった

<出禁>を食らった、谷底にあるガストの瓶ビールのことは覚えていない
めちゃくちゃ安いワインのグラス売りを、これまためちゃくちゃに安いとろろ汁で飲ったので

「やめてと言っても、朗々と歌いつづけておられました」
と、長身で瘦身の女性従業員は<出禁>の理由を説明した
多分この注文の仕方が影響している

近頃、ビールは中瓶が圧倒している
JR下今市駅にほど近い甚平と、清原住宅から歩いて4分の華のれんは居酒屋系で、ビールは大瓶だった 裏は返さなかった 
甚平は開けるのが遅すぎ、華のれんはあまりにも高かったから

まだ20代で等々力の宇田川アパートにいた時は、中国料理の荒木食堂増田そば屋へよく通った 
当然、大瓶だった
あの頃、中瓶を置いてる店はお高くとまってるところと相場が決まっていた

2021年の現在、一般家庭の冷蔵庫に瓶ビールが入っていることはまずない
缶ビールへと一変した
昔と言ってもそんな大昔ではない まだオヤジは生きていた
帰省すれば中村酒店に、キリンビールをケースで注文してくれた
返せば1本5円になるし、缶のように潰さずに済む

パヤオに居を構えていた頃、湖の畔にしつられてある石造りのベンチでよく飲んだ
セブンイレブンより酒屋の方が1バーツ安かった
その上、空き瓶を持っていけば1バーツくれるのだ

ちなみにタイには大瓶と小瓶はあるが中瓶はない
世の中は中瓶化へとまっしぐらに邁進している
中瓶化と缶ビール化は連動している
危険、極まりない

俺は65歳だが、あと20年しないうちに死ぬだろう 
これから生まれてくる人たちには申し訳ないが、その前に、世界は、世間は消え失せる
原因まで見通せないが、地球からヒトという種はなくなる





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