2021年5月27日木曜日

是枝裕和の5本 その3 空気人形

 17段目9番



を通り抜けると、そこは海だった
深海だった
深海魚というソープランド
新宿歌舞伎町にあった

地下深くへ降りていく店だった
その斜め前のプレイボーイには、斎藤由貴に似た女がいた
若い頃幾度となく(トルコ風呂)改めソープランド詣をした
それほど若くない頃もタイのそうした店へしばしば通った

だが相手の顔やサービスの内容一挙一動を、この年になっても覚えている女は10人に満たない
プレイボーイの女はその中の一人で、彼女は斎藤由貴を栄養失調にしたような顔と雰囲気を持っていた

斎藤由貴といえば、ちょっと前まで渦中の人であった
ここ2、3年日本のマスコミは不倫を叩いて、金儲けする傾向にある
「もういい加減にしろよ 誰が誰とどこで嵌めようが勝手じゃないか 放っておけよ」
不倫相手がパンツを頭から被ろうが、それは各人の恥垢じゃなかった嗜好ってやつさ

確かに倫理には反するかも知れないが、人間が道徳に則って生きていくのは、かなり難しい
思い通りにいかないのが人生じゃないか
不倫は決して文化ではないが、人を殺すよりは何億倍も崇高な行為だ

戦争に加担する安倍政権を支持するより何百億倍も、人道的ふるまいだ
それよりなにより斎藤由貴には、こんな歌がある
玉葱、人参、トマトと連呼するヤツだ
この三つは野菜の三種の神器で、玉葱人参トマトを毎日食していれば、癌に罹ることはない

斎藤由貴はこの歌を歌うことによって、不倫の1回や2回5回10回は許されていい、免罪符を得た
夜を潜り抜けると深海だった
そこには深海魚の他にも、誰かが何かが、きっと潜んでいる

トンネルを抜けると、ぼくは高校2年生
仙台七夕の日は仙台赤門ユースホステルに泊まり、無数の蚊に刺され一睡もできなかった

その時「夜」と題して
 夜を歩き抜けると
 前を行く女たちが、何やらキャッキャッと、はしゃいでいる
 ぼくには、ぼくの生き方があっていい、はずなのだが
と、いう詩を書いている






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