10段目7番
蔦さんふたたび
なれの果てをまたやってしまった
連続飲酒がとどまるところを知らない
きょうで何日目なのか、飲み始めたのはいつだったのか?
真剣に考えりゃ分かりそうなものだが、目の前の一杯が先延ばしにする
今、魚べいにいる
回転寿司やのカウンターで飲んでいる
頑なになっている 何か気に食わぬことがあったのだろう
「金はあるが、払ってなんかやるもンか」
執念を寄せ集め念じている
で、言った
「警察を呼んでくれ 銭がない」
で、来たのが蔦さんだった
もちろん蔦さんは覚えていてくれた
蔦さんに免じて「金は、あるのよ」と勘定もキレイにした
蔦さんの姿形や声だけでなく気配が辺りを支配していた
パトカーでアパートまで送り届けてくれた
この前調書は取ったのだし、交番に立ち寄るような野暮な真似はしない
蔦さんが都合してくれ返さないままになっている、サンダルの灰色が煌々と甦ってきた
蔦さんの左ひじを抱きかかえ階段を上がり、靴を脱ぎ、左側に位置する風呂場を覗かせ「ほら、これですよ」とサンダルを示した
持ち帰りはしなかったが、わざわざ部屋に引っ張り込んで見せたことを、嫌がってる風でもなかった
「酔った甲斐があった」と自分が誇らしかった
3時間か4時間眠り、置いたままになっている自転車を取り戻そうと、魚べいまで歩いた
夜明け前の街は寝静まっている
魚べいの駐車場はガランとしていた
このあとセブンイレブンでプレミアムという25度の焼酎900ミリパックを買ってしまう
だが、これを書いているのは連続飲酒を見事抜け出した、2日目の昼下がりだ
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