2020年6月10日水曜日

佐藤愛子の5冊 その3 ミチルとチルチル

8段目4番
棄権の誘惑
 
 
よく人生をマラソンレースに例えたりするが、同感である
スタートしたのは覚えていない
気がつけばいつのまにか走っていた
若い頃は、集団から少し離れた位置をひとりぽつねんと走るのを好んだ
そして目の前の集団を先頭集団と固く信じていた
ギアをトップに入れさえすれば、すぐに追いつくものと思っていた

瞬く間に数10年が過ぎ、集団から遠く離れてしまった
まわりに人影はない
あの集団が今も、存在してるのかどうかもわからない
ぼくは変則ギアのないママチャリだった

近頃分かってきたが「負け惜しみ」で言う
人生に勝ち負けなどはない 苦も楽も幸も不幸もない
あるのはスタートとゴールだけだ
これまでにフルマラソンを5回走った
すべてを棄権した
肉離れだけでなく棄権も癖になるのだそうだ

「まったくなあ」
だが、人生マラソンでの完走は間違いない
死がゴールだからだ
自殺を棄権と見做す捉え方もあるだろうが、ぼくはゴールとわきまえる
高望みとじゅうじゅう承知しているが
宝くじの1等よりむずかしいだろうが
ゴールを実感して死にたい
棄権の誘惑蹴散らし実際にゴールして死にたい



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