ママチャリブルース
ブランチはカオマンガイにしようと、下に降りたがいつもの場所にママチャリがない
そうだった きのうはしこたま飲んだんだ
パズル合わせをするように、切れ切れの記憶を寄せ集め、夕べ引っ掛かった店を炙り出す
「きのう、この店に来ませんでした? そん時、歩いて来ましたか、自転車で来ましたか?」
ママチャリ捜しで日が暮れて、ヤケ酒飲んで夜が明ける
型も色もまったく同じ自転車を、2週間前にもなくしてる
手放し運転がいまだに出来ぬ
ああ、これがおいらのママチャリブルース
借りたばかりのアパートから15キロ離れた彼女の実家へ
買ったばかしのママチャリを飛ばす
確かこの辺のはず
おとといも、彼女のオートバイに相乗りし、やって来たのだ
ソムタム売りの屋台で訊いてみる
「路地の1番はどっちの方です?」
「あら、よも助じゃないの」
よく見りゃモッドの妹だ
「モッドのうちへはどう行くんでしたっけ?」
「モッドならチェんマイに行ったわよ」
「で、いつ戻ってくるんです?」
「遊びに行ったんじゃないの モッドはチェんマイに帰ったのよ」
いったいどういうことなんだ!
<チェンマイには厭きたから実家に戻った>
と聞いたから、この街へ来たのに
(花の名前がついたアパートを借りたよ)と報告するつもりだったのに
行きはよいよい帰りはこわい
ギーコギーコとペダルが唸る
ああ、これがおいらのママチャリブルース
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