2020年1月10日金曜日

船戸与一の5冊 別格 国家と犯罪

4段目12番
よもぎ考  船戸与一に捧ぐ

姓は蓬田
草餅はヨモギから作るモンだと大昔から知っていたし、蓮田<はすだ>さんとか、逢田<あいだ>さんと、読まれたり呼ばれたりするたびに、この名字は珍しいのだと1人悦に入っていた

中学の時草刈とどっちの名前のほうが少ないかで賭けになり、電話帳で調べたら草刈70に対し、こっちは120
何者かに裏切られた気がした

今なら分かる 
国家にしてやられたのだ
小学5年の秋の写生会の時だ
片岡勝が近づいてきて、足元の葉っぱをモミモミし、それを乾いた葉っぱで包み、ポケットから取り出したマッチで火をつけ、「これがもぐさだ」と口元に差し出した
さて、そいつを吸ったか、どうか?

例の地下室のパーティーの1回目に片岡は参加したが、その後は出ていない
仲違いしたのだ
原因は覚えてない
ただ片岡の自由さが羨ましかった

9歳年上の兄は、かなりの量の平凡パンチを買い込んであった
土間の片隅にうず高く積まれたソレを引っ張り出しては、気に入ったグラビアを切り抜いて特製ノートに貼りつける
それが高校入試を控えた密かな楽しみだった

だが上京して初めて買った雑誌は「平凡パンチ」ではなくプレイボーイ
記事の1つに、この前死んだ野坂昭如が「バナナの皮の内側の繊維質を削ぎ落とし、乾燥させ、パイプで吸えばそこそこの酩酊感を得られる」と述べていた
今、ほぼ、ほとんどの国が麻薬を厳しく取り締まるというポーズとっている
そうしないと国家としての対面が保てないからだろう

しかし<もぐさ>を吸うのは取り締まれまい
もぐさは、ヨモギのなれの果て
俺は<もぐさ>だ
どこにでも蔓延るヨモギ
俺は、俺自身をモミモミして吸引し、いきいきとラリる
誰にも文句は言わせない









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