2019年9月27日金曜日

溝口健二の5本 その3 浪華哀歌

1段目13番
遠い昔

そこには母がいるはずなのだ
ここまでだらだら生きてきてしまうと
遠近感が損なわれ
焦点が合わない
うまく像を結べない
遠いのか近いのか、遠いのならどのくらい遠いのか
まだボケてはないが
認知できない
ほんとうはそこへ行って温もりたいのに
日向の匂いを皮膚呼吸でもって取り込みたいのに
柔らかな情景に包まれたいのに
どうにもこうにも後戻りはできないようだ
ならば
ちょっくら未来たって
無理、無残、無様
それどころか
ここまでだらだら生きてしまえば
一寸先の闇を覗こうにも
そのなんだ
スキルってやつがありゃしねえ
だらだらと生き
だらだらになっちまった自分に
悔いなぞないが
ただ一度
きっと互いに照れるだろうが
生きてる母を
抱きしめ
たかった









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