2019年9月10日火曜日

五木寛之の5冊 その4 青年は荒野をめざす

1段目9番
橋幸夫と佐分利信

 
母は橋幸夫のファンだった
小学校の修学旅行の母へのお土産は、橋幸夫のブロマイドつき折りたたみ鏡だり畳み鏡だった
三ヶ月もしないうちに鏡はぼくの机の上にあった

母の影響で御三家の中では橋幸夫が一番好きだったが、奪い
取ったわけではない
母に上げたものが、いつのまにかぼくの手の中にある
そうしたことは良くあった

橋幸夫以外にも母が好きになった芸能人は何人かいるはずだが、
他で知っているのは佐分利信
戦争中、女学生や女たちは、工場へ働きに行かされた
母にもそうした時期があった

そこの管理を担当していた兵隊から来る年賀状母は大切にしていた
ていた
というより、その人から年賀状が届くそのことを大事に抱えていた
多分その兵隊と佐分利信は似ていた

母の実家を継いだ弟のモリゾウさん子供心に大好きだった
そのモリゾウさんが
姉やんは責任感の強い人だから」
と言ったことがある
母を知る人なら誰もが感じることだが、あえて言わずにはおれなかったのだろかったのだろう

モリゾウさん以外にも、母には妹がいて弟がいた
一番下の弟は若い日に自殺した
母は自らが死ぬまで
その弟のことをずっと不憫に思っていた
母はそういう人だった



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