2016年9月23日金曜日

小学時代の3冊 その2 二人三脚 源氏鶏太

0段目2番
スアンドーク病院


別名マハラート病院の診察料を踏み倒したことがある

ドイサケットカオ道路アーケードに向かえば、Tの字に突き当たる
その少し手前右側の、アマチュアバンドの生演奏もやる酒テラスで飲んでいたのだった
例によって泥酔し追い出されるように店を出て、自転車に跨りいくらか行くと、タイ人の好きな荷台付乗用車と正対する羽目になった
どちらも譲らない
こっちにだって泥酔したプライドがある
荷台にいた男が降りてきて揉み合う形になった
(のだと思う)
ぼくは転倒し後頭部を強く打った
(のだと思う)
思う思うで恐縮だが覚えてないのだから仕方ない
頭から出血した
これは確かだ

車にいた3人か4人か5人の男たちは血を見てびびった
ぼくを荷台に積み上げ、おそらく自転車も積み込み、どこかへと走り出した
着いたところがチェンマイラーム病院だった
前回書いたように、ここにはいい印象を持っていない
なので「ここじゃいやだ」とだだを捏ねたのではないか

連中が次に向かったのがスアンドーク病院
いつのまにか診察台に横たわっている
(うとうと)しているうちに治療は終わり「3針縫った」のだそうだ
「俺を運んできた奴らはどうした?」と聞くと、どうも帰ってしまったらしい
「ちょっと待っててくれ、治療明細を持ってくる」
と研修医らしい若い男も、何処かへ消えた

0時は過ぎているだろう
診察室にも、それに連なる空間にも、ひと一人いない
(悪いのは奴らだ 好き好んでこんな所に来たんじゃな        い 金を払うべきは断じて俺ではない)
まだ泥酔の域から脱しきれぬ眉間に言い聞かせ、
とんずらをキメたのだ

朝方2、3時間まどろみロータスパーンスアンゲーオホテルにくっ付いている交番へと赴いた
連中を(訴え)自転車を取り戻すのだ
だが誰を訴えればいいのだろう
車の色も車種も乗っていた人数も曖昧だ

わたくし蓬田秀雄は日本生まれの日本人で昨日は酒を飲み
と、調書を取り出したものの、そっから先へ進めない
ビールは何本飲んだかだって?
6本か7本か8本か9本だ
正確には何1つ覚えていない

業を煮やした交番はバイクに乗っけて、ぼくをツーリストポリスへ移動させた
ここでも同じように調書から始めたが、埒が明かない
そんなこんなで実地検証をしようということになった
パトカーではなく普通の車だったと記憶する
まずはチェンマイラーム病院だ
地下1階の駐車場を隈なく探したが自転車はない

次に向かうべきはスアンドーク病院だが、あの広大な敷地を思うと尻込みする
未だに自分が治療を受けた病棟を把握できていない
きのうおそらく通ったであろう道を遡り、店まで行ってみたが自転車はなかった
ここまでくるとさすがの酔いも、醒め始め、興ざめてもきた
「もういいです 諦めます」
警官はしつこく「アパートまで送ってやる」と言い張ったが、丁寧にご辞退申し上げた

このあとも、左足の甲にヒビが入った時、デング熱の時、転んで左目が潰れてしまった時と
何度もお世話になっている
無論のこと治療費はきっちりキレイに払ってやった
いや
払わせていただいた
















0 件のコメント:

コメントを投稿