36段目5番
浅野啓司
を、ヤクルトスワローズのエース松岡弘より好きだった
だが、主戦投手は松岡だ
浅野はどんなに好投しようと味方が点を取ってくれぬ悲運のピッチャーだった
巨人に移籍した年、カムバック賞を手中にはしたけれど
福山電波工の出身だった
ひょんな事情が折り重なり福山に1泊する羽目になった
実はきのうの朝、福山駅で下車しているが、JRからしまなみライナーへと一直線に駆け抜けたので旅館やホテルを知る由はない
道行く人に教えられたのがリッチモンド・ホテルだった
エレベーターでフロントのある8階へ上がる
1晩2万6千円は高いのではないか?
秋分の日で、おまけに金曜日ではあるが、それなりに待たされたあげく「満室」と告げられた
ぼくが「他のホテルにも当たってもらえますか?」とお願いしたのか、フロントの女がそうしてくれたのか、定かではないが5分以上は待たされた 都合がついたようだ
女は(Rホテル周辺マップーお食事のご案内ー)と記した、駅前の略図をくれ、ダイワ・ロイネット・ホテルへの行き方を微に入り細に穿ち説明してくれた
部屋代が同額だ 同系列なのだろうか?
近かったが、自力ではたどり着けず、通行人2人の救けを借りた
こっちのフロントは1階だった
10階の部屋は狭い気がした
すぐベッドに横になった
起きると21:00だった 2時間、寝たのだ
部屋の窓からJRの駅が見通せた
駅前に立ち並んだチェーン店の居酒屋に入りサワーを頼んだ
薄かったので瓶ビールに改めた
店の名前は忘れたが奴とぶっかけきゅうりを注文したのは覚えている
次に起きると3:00だった
さっきの居酒屋は閉まっていた
左隣のなか卵という店の明かりが煌々と灯っていた
入口に食券の自動販売機が2台でんと並んでいた
缶ビールにハイカラそばの小盛り券を購入する
2回目は缶ビールとお子様ランチにトッピングでつくカレーライスにした
おそらくバングラデシュかネパール人の青年が応対した
その時間帯を1人で働くちょっと太めの若者が手にする黒いゴミ袋が、道路に面したカウンター席から見えた
すでに日付は変わっている
新幹線に乗るのだからと、湯舟に浸かった
髭と頭を剃らなければならない
部屋に比べ浴室は豪華だった
汗ばんできたのでヘリに腰掛け、持参の5枚刃で髭と半分以上失われた髪の毛を当たった
浴槽を出、シャワーを浴びる
シャワーが止まらなくなってしまった
把手を上にあげると出るのだが、下げても湯舟に切り替わるだけ、どういじってもあがいても湯水は止まらない
シャワーをまき散らしたまま1階へ降り、ベルでフロント娘を呼び出す
<高木>との名札をぶら下げた女が、把手を真ん中に据えると、シャワーは瞬時に止んだのだった
2万6千円も払ったのだからチェックアウトの11:00まで粘るつもりだったが、電車は動いてるし、アヤもついたのでチェックアウトした
福山に滞っている間、浅野啓司に思いが至ることは1度としてなかった
この先福山電波工業高校の位置をグーグルマップで調べることもないだろう
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