2021年7月2日金曜日

ルネクレマンの4本 その3 居酒屋

 23段目4番

目覚めぬ朝に


目覚めぬ朝はどうしようもないチンケな夢でも見るしかないが、夢はナマモノナマケモノそうは問屋が卸すまい
ここまで考えて詰まった
目覚めてないのなら考えられないんじゃないか
とすればこれは二重構造の夢だが、いつもとは様子が違う
普通ならば夢のまた夢と気づいた時
すでに覚めているはずなのだ

ところがホッペタをつねろうにもそのホッペタがないぞ
人差し指も親指もないぞ
俺の本体が実体が肉体がないぞ
俺は息をしてない
俺にあるのは意識だけだ
その意識が洞穴に吹くような風に浸食され震えている
俺は死んだんだろうか

なら、この意識は何者なんだ?
成仏できないというのがこれなのか
どうすれば成仏できるんだっけ
「死んだら無」とばかり思っていたから
そこいらへんのとこ勉強してないからな
息をしてないせいか意識が喘いでる

「この状況を何とかしてくれ
死なせてくれ
それができないなら生き返らせてくれ
ええい、死にたいだの生きたいだの贅沢は言わないからこの状態を終わらせてくれ」

これが例のブラックホール
俺の意識はブラックホールを落下しつつあるのか
そしてこのままどこまでもいつまでも落下し続けるのか?
ガキの頃に見た夢を思い出した

果てのない荒れ地に一人ぽつんといる
横には大砲があるんだ
俺は大砲を撃つ
遠くの方で火柱が上がったかと思うと、俺はドカーンと爆発する
また撃つ、またドカーン

あの時と同じだ、意識が不安に鷲摑みされている感じだ
「ブラックホールに底はあったんだっけ
そこまで落ちきれば意識は消えてくれるのか?」
うたた寝で見る落ちる夢より怖いモノを知らなかった
この落下感降下感は、それより怖いぞ

「けど、いつからこうなった?
この状態の始まりはどこなんだ?
そうだ、夕べだ、夕べはシコタマ飲んだものな
何本飲んだんだっけ、覚えちゃねえな
どこで飲んでたんだっけ?
おっ!コレだ、こいつだ
俺の実体が駆け戻ってくるぞ、肉体が意識に入り込んでくる
覆い被さってくる
おお、覚めたのはいいがよ
いい年こいて濡らしちまったぜ」






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