2021年6月8日火曜日

ボブ・ディランの5曲 その5 天国への扉

 18段目6番

酔っ払い


という言葉の響きに
物心がつく前から
おふくろの胎内に宿る そのずっと前から
痛烈にあこがれていた

泥酔酒乱アル中トラ箱
そういった語彙に出くわすたび
心熱く震えた
一秒でも早く大人になって
酒で身を持ち崩したいと 切実に願った
果たしてその通りになった

このことは
膨張する宇宙に 収縮する瞳孔に
アインシュタインに ホーキングに 
誇っていい
あしたかあさって もしくは十年後
トラックに轢かれた 林家小染のように
階段から落ちた 中島らものように
白骨死体で発見された 義兄のように
俺は酒で死ぬだろう

心やましき政治家よ 心やさしきテロリストよ
「跳ぶ前に飲め」
「殺る前に酔え!」



それほどではない決意


寝起きの水は健康にいいという
代わりに焼酎 一杯ひっかける
     と
するすると日が暮れていく
この世に勿体つけることもなく
あの世をはばかるでもなく
いたって健やかに時は流れる
けれども
本だって読みたいしDVDも見たいから
「これ一杯でやめておこう」
     と
きのうもおとといもさきおとといも
思ったのだった
     が




飛翔



まだ幼かった頃

鳥はいい、どこへでも飛んでいけて

と羨んだことがあった


65を3日後に控えたきょう、朝5:00の灰色の曇天を

網戸の入った窓枠から眺めている

焼酎をほおばりつつ、ほとんど綿の取れた座椅子の鉄枠に背を預けて


つまみはぶつ切り玉葱の酢漬け

燕が四角い空にこっちからもあっちからも、けたたましく現れては消える

「これでもか、それでもなのか」





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