2021年5月11日火曜日

宮本輝の5冊 その2 草花たちの静かな誓い

 17段目3番

眠れぬ夜は


眠ろうなんて野心は抱かず、尿意を覚えたら躊躇なく立ち
心置きなく寝返りを打ち、過去を検証しては心行くまで落ち込み
手を替え品を替え手枕肘枕をして、将来を見積もり
右脳で興ざめ、左脳で青ざめ
ご破算で願いましては、「なぜか、せんずり」
こうなった以上、思うに任せぬ人生を祝して、ストレッチを一時間
さらば、夜明けをに走り出すのだ



一時しのぎ
 
 
口を開け、頭を垂れ、ぼくの一日が始まる

軽薄が襲い笑い、ハッピーな気持ちで一時しのぎ女を想い「愛したい、まぐわいたい」と一時しのぎ

お昼は荒木食堂の半チャンラーメンで、一時しのぎ
3時のおやつには荒木食堂の娘の知的な顔と、うらはらの圧倒的な太股を拝して、一時しのぎ

今日もまた無為に絡めとられたと深く反省、時間稼ぎの、一時しのぎ

(一日)という言葉の持つ曖昧な分量に、しばし茫然おまけに自失
無闇に悔しく、やたらと疲れ、 いたずらにイラつき
「人生なんて一時しのぎ」と強引に押し込んでは、肩を透かされ、一時しのぎ

口を開け、頭を垂れ、ぼくの一日が終わる





 
 
 

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