16段目1番
リヤカーを押す
ぼくがタイを好きなのは、屋台のせいなのではないか
人のある所必ず屋台は出る
小便の時が少々厄介だが、飲むのは屋台だ
昼間の商売を終えた屋台が引き揚げていく
母親が引き、女の子二人が後を押す
「ようし、それ行け!」
と心の中で叫ぶ
ベロンベロンの時は、加勢にだってつく
おかみは「すわ」飲み逃げかと、目を三角にし
突然の闖入者に姉と妹は目をまんまるにした
昔、うちにはリヤカーがあった
河川敷には畑があった
小学生のぼくは幾度もリヤカーを押した
理不尽に、おやじに殴られた、その午後も
切れるように冷たい、あぶら川で洗った大根積み込んだリヤカーを、ためらいなく、何を疑うでもなく
突き抜けた空に向かって押した
0 件のコメント:
コメントを投稿