2020年10月8日木曜日

山田太一の3冊 その1 飛ぶ夢をしばらく見ない

 11段目3番

アル中楽天家ルー・ジャクソン


ルー・ジャクソン、1935年米国ルイジアナ州に生まれる、昭和41年から3年間サンケイアトムズの外野手として活躍、昭和44年5月17日午前0時5分、急性膵臓壊死のため東京西新橋の慈恵医大病院にて死亡、33歳黒人
記録を調べてみると、彼から1年遅れで入団したデーブ・ロバーツの方がずっと上だ
けれど何でもないライト前ヒットなのに素知らぬ顔で2塁へ突進する無謀な走塁と、時折バックスクリーンに叩き込むピンポン玉のように空高く舞い上がるホームランを、覚えている人は多いと思う
親類が現れず、仕方なく球団が葬式をだしたが、その時の監督別所毅彦の弔辞は、楽天家のルーというフレーズで始まる
(楽天家のルー、お前は他国で一人死んでいった
楽天家のルー、お前のディナーはビールに焼き鳥
人は誰もがお前を楽天家という
人呼んでアル中楽天家
ルーの内臓はめちゃめちゃだった
お人好しのルー、お前は、人を疑うことに興味がなかった
お茶目なルー、ホームラン賞のビールを大事そうに抱えて
誰もお前を憎めなかった
誰一人、お前の飲酒癖には立ち入れなかった
女好きのルー、堀の内やすらぎ館が、お前の寝場所
おとぼけのルー、お前にゃ妻子があったはずだが
人はみんな口を揃えて言う、楽天家のルーと)
さようなら、あの無謀な走塁で天国の遥か彼方へ、駆け抜けてくれ





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