2020年2月4日火曜日

新藤兼人の5本 その5 落葉樹

5段目4番
心静かに


いつものように20︰00床に入り、もうすぐ4︰00になるというのに
まだ一睡もできていない 
うとうとさえしない
こんな夜はイライラして、たとえば「チキンラーメンを食うか食わないか?」で30分は心の葛藤があるのに
今夜は空腹を感じない 
というか空腹に思いが至らない
普段なら4:00に起き、ストレッチをし、走りだす
雨も少しの熱も睡眠不足も厭いはしない

朝は、さぼろう 
このままがいい
夜が明けぬのなら、それもいい
いつのまにか55になった
この3年の間に兄が死に父が死に友が死んだ
その死を実感できず、時々怪訝に思うのだった
ざっくばらんに言ってしまえば
母が死んだ時のような、悲しみや慟哭がない
毎日の訃報欄のように、その死は「あっ」というまに通り過ぎた

ところが今夜はどうしたことか
彼らとした話や、 した事や 
彼らの身振り手振りが、次から次へと浮かんでくるのだ
思い出そうとしなくても「あれっ」こんな事あったっけ
なんてことがてんでんばらばらに脳裏をかけ巡る
悲しみは、一欠片もよぎりはしないのだが
そのせいだろう 
心は実に安らかだ
もうすぐ5:00 
夜は、やはり明けるだろう
こんな夜は2度とないのではないか
夜が明けても心は安らかだろうか?
このまま起きてしまおうか 
それとも一眠りすべきか
てなことをあれこれ考えているうちに
確かな睡魔がやってきた

その時だ
「心静かに」
と、誰かが言った





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