ポロポロ
ぼくは枕をしない
畳の上に、あるいは床に直接、時には大地に
毛布一枚拡げて仰向ける
大の字が究極の寝姿だ
ぼくは寝返りを打たない
踝で大地を抱え、尾骶骨で交わり
脊柱で、そのエネルギーを感じるために
「枕は高すぎても低すぎてもいけない」
と、テレビが言った
低すぎると血が頭に滞り、顔は浮腫み
脳内出血の遠因にもなる
そこで理想の高さを論じていたが
枕にゃ端からそんなものは存在しない
枕がなければ
頭に溜まった血は後頭部から大地へ流れ込み
地球の深淵を廻り
リフレッシュして土踏まずに帰ってくる
貨幣経済以前、人類は枕を持たなかった
夜毎よごとに、金銭の勘定をせざるを得なくなって
ヒトは頭を高くしないと眠れなくなった
確かに大地にすべてを委ねた姿勢は
金儲けの算段には不向きだ
と言って
ぼくは枕を侮る者でもない
本を読む時は、枕を二つ重ね、上の方を更に二つ折りにする
そして、今
生きてるということに
ここに在ることに
刹那のない永遠
つまりは死の恐怖に
耐え切れなくなってしまった時は
枕を懐に「強く強く強く」抱きしめ
「ポロポロ、ポロポロ、ポロポロ」
と
意味にならない音声をこぼし続ける
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