牛舎
牛舎は臭い
五十頭はいる大きな牛が、次々と迫力のある放尿放糞をし、ぼくからすれば一週間分位の糞を、一度に出してしまう
まだ暗いうちに起き、ちびた竹箒で、そいつの始末をつける
それが俺の仕事だ
夕方の四時にも同じ事をする
時々、尿と糞に存分にまみれた自由奔放な、牛の尻尾に顔を激しく殴られながら
ぼくは十日間
電話帳にあった牧場に押しかけ、殆ど声を発することなく働いてきた
ノン子ちゃんはどうしているだろう?
林さんはあれからも一日欠かさず、五時半に起き、林さんより大きな奥さんの愚痴に(合いの手)を入れては、躍動感溢れる指使いで、乳を搾っているのだろう
呑気なノン子能天気
と、奥さんは、ノン子ちゃんを起こすのだった
まだ二ヶ月と経っていないのに、赤い屋根の牛舎は十年も昔に行ってしまったし、あれほどイヤだった牛舎の匂いも忘れてしまった
あの時、着ていたヤッケを着ても、帰ってきてすぐに洗濯したから匂いなど、しない
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