2019年10月14日月曜日

ちばてつやの5冊 その2 のたり松太郎

3段目1番
雨と死と祈りと

 
雨が降ると
<蛍の光>を歌った
薄暗い茶の間に仰向けに寝っころがって
窓の外を眺めて歌った   
いつも一人だった
八月に雨が降っても歌った
一月に降れば、当たり前に歌った
年がら年中お構いなしに歌った
「調子っ外れの歌を歌うな」
と、兄に頭を蹴っ飛ばされた
それでも雨が降れば
澱んだ茶の間の板敷きに横たわり
祈った
そして泣いた




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