2025年9月16日火曜日

山口百恵の5曲 その1 ひと夏の経験

 関根大サーカス


馬場ゼミの1年目に取材の項目があった 2期生のぼくは関根サーカスに狙いをつけ、次の公演である佐原に行こうと決めた「リング」などで今をときめく1期の中田秀夫は刑務所囚人のインタビューをしたらしい

佐原はどんな所だろう? 五木寛之夫人の岡玲子勤めている精神病院で、ある若者が詩を書いた 「風に吹かれて」に載ってるはずだ

それをあたかもぼくが記した細工して馬場先生に提出した

また関根サーカスには阿久根巌がいる 映画の美術担当として1時期出ずっぱりだった

初日からぬいぐるみを着せられてしまった 目の位置がさっぱり分からない 日付が変わった夜半に夜逃げしようと心に決めた だけれども阿久根巌の取材だけは挙行したい それは何とか果たせた


最後にサーカスの歌全文を載せる

      サーカスの歌

サーカスの歌悲し 最近では祭りにサーカスが来なくなった

道化の子はラッパを吹けど誰も笑わず 僕のサーカスの描かれた点景人物は画面の中で静止させられる あたかもこの世界がこの世界が生きているものが動きをやめたと感じられ僕はふっと恐ろしくなる

ああ道化師よ 君は笑いを売れど 君の悲しみを買ってくれる者はどこにもいない サーカスの歌悲し サーカスは滅びゆく芸術なり 二十世紀の遺産なり

レモンの断面のような一輪車の上で輪投げをする道化師の兄弟君たちはその芸を別に誇ることなく淡々と輪投げをする 多くの観客が帰っても 観客席に誰もいなくなっても サーカスの団長が夕食をまずしい夕食を食べ終えて眠りについても 明日の朝まで一度も輪を落としたり失敗もせず 誰かが「もうやめなさい」と言わぬ限り兄弟はていねいに輪投げをするだろう

若い若い子供子供した道化の兄弟 ああ君たちは幸せだ この世で何をしていいか迷うことなく生まれてすぐからこの芸をこの輪投げをして来たの如く 今日もレモンの切り口の断面のような一輪車の上で輪投げをする サーカスの歌悲し 楽師のラッパからするりと抜けたサーカスの歌のメロディはもう一人のラッパにするりとすべり込んでこの世に形を残さない

ああ サーカスの歌悲し


おまけ 五木は詩に添えられたスケッチブックの絵を丹念に丹念に描写していく そんなこと無意味だと言うふうに






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