十八歳、念じる
「ひとりぼっちだ」といった
「親も兄弟も、付き合いのある親戚も、いない」といった
お風呂が好きなんだ
ぬるいお風呂に何時間も入ってアイスティーを飲むのが好きなんだ
「小説より詩を読む方がしっくりする」ともいった
「でも、サガンはいい」と
「サガンはエリート意識が鼻についてキライだ」というと
「一人で、たとえ恋愛はしても、強く生きようとするのが好きなんだ」といった
「この6月で26になる」と
「この仕事を始めて4年が経つ」と
「あと半年働いたら、小さなお店を出したい」と
「でも、辛い、惨めだ、一人でいるとわけもなく悲しくなる」と
周りの女と話すと何もかもを投げ出したくなる
これでいいと思ったんだ
バーやキャバレーで働くより何倍かは増し
「初めてだ」といったら
「じゃあ、ヨボヨボになっても、わたしを覚えているかも知れないわね」と笑った
「どっちが」と聞くと
「もちろんあなたよ、わたしはヨボヨボにはならないもの」と、今度は声に出して笑った
何をどう血迷ったのか
その最中にベラベラと喋りまくって、なかなか終われないでいると
「喋っちゃダメ、何も考えないの、この事に熱中するの」
黒目がちの目で、まっすぐに見て諭した
「朝がつらい」といっていた
「こんな所には来ない方がいい」というような事を、2度か3度はいった
あとから気がついた
彼女は名刺をくれなかったし、最後まで源氏名をいわなかった
それから半年の間にその店に4回行った
指名は出きずとも念ずれば
彼女に当たるように思えたから
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