ある雨の日の情景
雨が降ると
とりとめもなく雨が降ると
ぼくの心は幼かった頃に帰っていきます
雨音が屋根に響くと母の吐息がそよぎます
雨は(ぐるり)をすべて被い隠してしまい
ぼくはとりとめもなく
詮方もなく
容赦なく雨は降り続き
目蓋は熱く厚くなり
掌はいつしか熱をおび
雨の音を聞きながら炬燵に眠ってしまいそうになると
記憶にないはずの情景へ(すとん)と落ちていくのです
そして
いつかは帰って行くんですね
雨で魂が洗い流された
(のっぺらぼう)の世界へ
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